1963年に開発されたケラトミレイシスはエーエルケーを経て、1990年、レーシックとして完成しました。エキシマレーザーとマイクロケラトームの性能向上もレーシックの発展に寄与しました。レーシックは点眼麻酔をしてからマイクロケラトームという超小型電動カンナを角膜にのせ、吸引固定してからフラップを作ります。
フラップの厚さは通常160ミクロンに設定されています。角膜の平均的な厚さは550ミクロンですから、160ミクロンのフラップは角膜の約3割の厚さに相当します。
マイクロケラトームのヘッドには金属ブレードが取り付けられています。ブレードが高速で往復運動した状態でヘッドが動いてフラップが作られます。
初期のマイクロケラトームはヘッド部分が耳側から鼻側に直線運動しました。直線運動ではヘッドが少しでも傾くとマイクロケラトームが止まる場合がありました。
そのため、新しいマイクロケラトームは耳側の軸を中心に、頬から額の方向にヘッドが回転運動してフラップを作ります。こうした回転運動するマイクロケラトームを用いたレーシックをアップダウンレーシックといいます。
回転運動のヘッドは止まることがまずありませんのでトラブルも少なくなっています。フラップは切り取られずにヒンジと言う一部分を残して角膜に接合しています。
従来の直線運動で作られるフラップのヒンジは鼻側にできますが、アップダウンレーシックのヒンジは額側にできます。ヒンジは額側にあるほうがフラップは安定し、シワやずれが起こりにくいため、イントラレーシックなど最新のマイクロケラトームはすべてアップダウンレーシックです。

フラップを作成後にそれをめくってエキシマレーザーを照射し、洗浄してからフラップを戻して固着させます。フラップは水分を除くと、濡れた紙が硝子に張り付くように角膜面に固着します。
術後2時間程度すると、かなりの視力に回復します。手術後の当日は全体的にやや白っぽい霞がかかったような感じで見えますが徐々にクリアになっていきます。
どんなに重い近視でも当日、裸眼で歩いて帰れる程度の視力に回復し、翌日には仕事もできます。近視の程度によって異なりますが、遠視状態がしばらく続きます。
遠視はフラップの安定と共に徐々に消えていきます。レーシックはフラップを再生しない角膜実質層に作るため、ピーアールケーやレーゼックやエピレーシックのような角膜混濁は起こりません。
視力の回復も早く、術後の痛みもありません。そのため、現在ではレーザー屈折矯正手術の主流はレーシックになりました。
同じエキシマレーザーを用いる手術でありながらレーシックがレーゼックやエピレーシックと大きく異なるのはフラップの性質です。フラップが上皮層だけで構成されたレーゼックやエピレーシックの場合、角膜上皮層の再生が不安定であることと、ボーマン膜が失われるために角膜混濁や近視への戻りが起こります。
そのため強度近視の矯正に限界があります。それに対してレーシックは角膜実質層にフラップを作りますので、レーゼックやエピレーシックのような問題は起こりません。
フラップが安定すると近視への戻りもありません。しかし、フラップ作成に伴う合併症はレーゼックやエピレーシックよりも深刻です。
レーゼックやエピレーシックの場合、上皮フラップが切れたり、きれいに作れなかったとしてもその場合はフラップを除去してしまえばピーアールケーと同じになるので対処は容易です。レーゼックは熟練した執刀医が行えばエピレーシックよりもきれいなフラップを作れますが、執刀医の水準によってフラップの出来、不出来が左右されます。

そのため、レーザー屈折矯正手術の経験が少ない医師はレーゼックよりもエピレーシックを行うほうがよいでしょう。レーシックでフラップが切れてフリーフラップになった、中央の一部が切れずに残ったなど、フラップ形成不全が起こった場合の対処は個々の状況によって異なります。
そのような場合、一般的には後日、フラップを作り直してレーシックを再び行うか、フラップを作ることが難しい状況になったときはピーアールケーを行うか、あるいは手術自体を断念するしかありません。レーシックのフラップはできるだけ薄いほうが重い近視も治せますので、ボーマン膜を残していながら、できるだけ薄く作るほうが有利です。
しかし、50ミクロンの位置にあるボーマン膜を失わずにフラップをできるだけ薄く作るには従来のマイクロケラトームでは限界があります。どんなに精度がよいマイクロケラトームでも、角膜のカーブが急な場合、フラップは設定より厚くなり、カーブが緩やかな場合は薄くなります。
角膜の曲率半径は8ミリほどですが、8.5ミリ近い大きなカーブの角膜にマイクロケラトームを用いると非常に薄いフラップができる場合があります。逆に曲率半径が7.5ミリ以下の小さな角膜にフラップを作ると厚いフラップができます。
吸引の位置が悪く、フラップがずれて作られた場合は、角膜の屈折率が変化し、張力のバランスがくずれて乱視が現れることもあります。フラップは出来るだけ薄いほうがすぐれた矯正効果が得られます。
しかし、金属のブレードを往復運動させて切り進むマイクロケラトームの精度には限界があり、常に一定の厚さのフラップを作ることは出来ません。フラップの厚さはカーブだけではなく眼圧や角膜自体の大きさにも左右されますので、実際には作って見なければフラップの本当の厚さが分からないという厄介な問題を抱えています。

通常レーシックは角膜混濁を起こしませんが、まれに炎症により角膜混濁が起こることがあります。角膜フラップ面に斑状や砂状の混濁が生じたものをサハラ砂漠症候群といいます。
サハラ砂漠症候群の角膜混濁はピーアールケーとは異質なものです。ピーアールケーの混濁は表面に起こりますが、サハラ砂漠症候群の混濁はフラップ下面に起こります。
マイクロケラトームのブレードによる金属アレルギー、感染、マイクロケラトームの機械油、点眼剤の影響などいろいろ考えられていますが、まだ原因はよくわかっていません。サハラ砂漠症候群の経過は一般的に、術後1週間後に軽度な混濁が現れ、徐々に混濁が増していきます。それと共に角膜のゆがみが起こり、遠視と乱視が発生します。
混濁部分でフラップが角膜に強く固着するため、角膜がいびつに平坦化するために遠視や乱視が起こります。そうした混濁は徐々に軽減していき、角膜のゆがみも半年ぐらいで収束していきます。
混濁が残った場合やフラップの固着で遠視や乱視が強い場合、フラップを再度めくって洗浄します。なお、K眼科では平成17年3月までに1万6200例のレーシックを行っていますが、サハラ砂漠症候群は5例(0.03%)発生しました。
イントラレーシックは5900例行っていますがまだ発生例はありません。ピーアールケーやレーゼック、エピレーシックにはサハラ砂漠症候群は起こりませんが、術後の角膜表面の混濁はよく起こります。
強度近視の場合、角膜混濁は500例に1人の割合で起こります。特に、マイナス10D以上の最強度近視では発生率は1割以上になるため、ピーアールケーはマイナス6D以下で行うほうがよいのです。

なお、ピーアールケーよりは少ないとはいえレーゼックやエピレーシックでも角膜混濁は高確率で起こります。また、カーブが大きく平坦な角膜にたいして、水をつけすぎると、フラップが浅く作られます。
特に問題となるのは、ヒンジが残らずフラップが取れてしまうフリーフラップや、フラップの中央部に孔が生じるボタンホールフラップです。そうしたフラップ形成不全はある程度の割合で発生しますが、発生率は医師の技量に反比例します。

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